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バランスを取りながら総合的な成長を目指す、大和証券「SODATTE」のコンテンツ戦略

「ドラゴン桜」をはじめ、人気マンガのキャラクターもコンテンツとして並ぶ大和証券株式会社の「SODATTE」は、同社の社名や「マネーレッスン」などのカテゴリー名を見なければ、金融機関のコンテンツサイトとは思わないかもしれません。子育てとお金の情報を同列に並べつつ、親しみやすいスタイルでまとめたところに、新しいコンテンツマーケティングの視点が感じられます。

このユニークなサイトがどのように誕生し、どんな目標を掲げているのかを、ダイレクト企画部推進企画課次長の井上真紀(いのうえ・まき)さんと同課主任の吉田一也(よしだ・かずや)さんに伺いました。

 

顧客の幅を若い層にも広げるために

井上さん(以下、井上。敬称略):弊社のお客様の中心層は60代から70代ですが、私たちの商品をもっと若い世代にも広げていきたいという思いでスタートしたのが「SODATTE」でした。ターゲットは、お金への意識が高い30〜40代の“子育て世代”と呼ばれる方たち。直接的な証券の話題はせずに、読み物のような感覚で子育てやお金に関する知識を得ていただき、その延長で証券のことも考えていただけるようになればと、2016年の4月にスタートしました。

運営当初は、企業サイトのリンクもなく、大和証券という色をまったく見せずに運営していました。そのため、読者も新規の方々が多かったと思います。現在は、企業サイトからの流入もあるので、既存のお客様にもご覧いただいていますが、読者の6割程度が30~40代なので、当初の目的を果たすことができていると思っています。

私たちが所属しているダイレクト企画部では、オウンドメディアを立ち上げる以前より、さまざまな観点からプロモーションを行ってきました。他社と一緒にタイアップ記事を制作するなどということもありましたので、色々なテーマでコンテンツを制作するということに慣れていたのも強みとして出せたのではないでしょうか。

吉田さん(以下、吉田。敬称略):ただ、大和証券色を出していないとしても、金融機関の情報サイトとして、お客様からの信頼を守るべきところは押さえなくてはなりません。

 

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井上:ですから、外部のライターさんが書いた原稿でも、当社の広告基準に合わせた審査をする必要があります。とはいえ、硬い印象の記事にはしたくないという気持ちと広告審査を満たす正確さとのバランスをとることが難しくて…。テーマに関しては、対象となる30~40代の人たちの興味・関心を掘り下げていくことで見つけられますし、その積み重ねの中でカテゴリー分けなどを行ってきましたが、内容と審査基準のマッチングは常に悩ましい部分ですね。

 

ブランド色を出しつつ内容をステップアップ

井上:最近になって少しずつ大和証券のブランド色を出すようになりましたが、その背景には、大和証券色を出さずとも、月間約60万PVまで成長できたことが挙げられます。また、それに伴って、投資初心者向けの記事が一巡したと感じたため、中級者向けの記事も企画に含めるようにしました。既存のお客様に読まれても十分役に立つ記事が増えたこともあり、どちらも行き来できるよう、ブランド色を少しずつ出していくようになりました。

吉田:その意味では、大和証券のサイトから「SODATTE」への流入はさほど重視しておらず、逆に「SODATTE」から大和証券のサイトへと興味を広げていただくことを考えていますね。

井上:投資初心者向けサイトという基本のポリシーがありますので、バランスを見て、初心者のための記事が足りていないと感じた場合には意識して増やすようにしています。たとえば、証券会社としてマネーに関する旬な話題を取り上げる一方で、「NISAって何?」といった基本に戻れる記事も用意するというように。

 

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吉田:読者からの反応や要望を集めるために、サイト上でアンケートも実施していますが、途中経過を見ても、やはりマネー関係の話題を取り上げて欲しいという要望が多い印象はありますね。

井上:過去3年間はこうした調査をしてきませんでしたが、実際にどの程度、役立つ情報が提供できているのかを知りたかったので、アンケートを計画しました。回答された方へのインセンティブがないので、どれだけ集まるかが不安でしたが、それでも答えていただけた方々のご意見は率直で貴重なものになっていますし、今後のサイト作りに反映していきたいと思っています。

 

外部との連携は分野別に実績を重視

井上:企画や運営の体制は、社内では私たち2名、外部では契約している代理店数社に約10名います。

契約する代理店は、メディアとしての実績を重視し、記事コンテンツに関しても定評のある企業を基準としました。また、ターゲットとなる30〜40代向けの記事の扱いに通じていることも重視した点です。

吉田:代理店によって得意とする分野が異なりますので、マネーの話題はこちら、子育てはこちらというように、記事のカテゴリーによって担当を分けています。

井上:また、外部のメディアから、ある企画に沿った記事が必要とされて「SODATTE」のコンテンツを提供したり、最初からタイアップとして転載することを前提に記事を作ったりする場合もありますね。

 

企画から掲載までは2〜3カ月

吉田:企画から掲載までの制作期間は、書き下ろしのコンテンツで2カ月程度、インタビューや取材が必要な場合は3カ月ほどかかります。

井上:企画は、こちらでテーマを提案することもありますし、代理店のほうでもコンスタントに企画案を考えていただいていますので、それを元にブレインストーミングを行います。

それぞれの代理店と月に1回ずつ編集会議を行いますので、ある程度の時間はかかってしまいますが、新たなアイデアはさまざまな方との対話から生まれるので、マンネリ化を防ぐためにも必要なことだと思っています。

吉田:その時々に、社内で旬な話題を会議にかけることもありますね。

 

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井上: IoTやeスポーツなどの話題は、関連ビジネスが投資の対象として注目されてきたこともあって、弊社の商品につながるテーマとして記事にも取り上げました。これらの企画は身近な話題なので初心者の方も入りやすいですし、その先にある株や投資にも興味を持っていただけるのではないかと提案したものです。そういう投資の切り口があるのかと気づいていただくだけでも意味があると思っています。

 

SEO対策でマネー分野でも上位ランクイン

井上:ライターさんによって記事のクオリティが大きく異なりますので、知識と経験の豊富な方に依頼するよう徹底しています。細かな表記ルールだけでなく、不文律的な部分も重要だからです。とくにマネー分野の場合は、長くお付き合いしているライターさんのほうが、理解が深いのでスムーズに作業が進みますね。

吉田:出来上がった記事は、できるだけ多くの方に見ていただきたいですが、そのためのSEO対策は、最近になって取り組み始めたばかり。
以前は旬のテーマや読者の皆様が興味を持ちそうな話題を主体としていましたが、最近では検索サービスからの流入も増えてきたので、よく検索される言葉から「SODATTE」を見つけていただきたいと思い、SEO対策に乗り出したというわけです。

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井上:実のところ、SEO対策を意識していなかった頃から、「SODATTE」には検索エンジンから訪れる読者もいました。自然流入だけでも月間数万PVくらいありましたが、専門家の方がおっしゃるには、対策なしでは大きい数字とのことでした。それならば、きちんとSEO対策をすれば、もっと見ていただけるはずだと思ったのです。

そこで、以前から企業サイトでSEO対策を依頼していた代理店にお願いして「SODATTE」にも対策を施していくことにしました。今年の1月末にサイトをリニューアルしたことも関係しているとは思いますが、以前は、保育園などの子育て系の検索ワードで「SODATTE」に来られる方が目立ったのに対して、今では投資などのマネー系の検索ワードからもきていただけるようになっています。最近は広告費を減らしていますが、PV数は減っていないので、よいバランスが生まれているように感じますね。

 

月間100件、口座開設へつなげることを目指す

井上:「当初は商品とのつながりが薄く、収益には直接つながらないサイトという認識でした。しかし、弊社はSDGsに資する活動にも熱心に取り組んでいるので、社内的には、教育を通じて社会に貢献するという意味で評価されているという認識です。

最近では「SODATTE」経由で口座を開設いただける方も増えていますので、その流れをもっと強化していけるのではないかと考えています。

また、内容のタイムリーさとも関係することですが、よりスピーディーに記事を掲載することを目指したいです。タイムリーの捉え方にもよりますし、ニュースサイトではないので、必要以上に急ぐ必要はありませんが、たとえば、マネー系の記事でしたら企画から最短1週間程度で掲載できるようになればいいなと。これは今後の課題ですね。

また、プロのメディアの方から、自然流入をさらに促すには記事の本数も重要だと伺いました。現在の担当は私たち2名のみで、さらに「SODATTE」以外の仕事も抱えていますので、月の公開本数は3、4本が限度。掲載本数を増やすことと、タイムリーな掲載を実現することは、ずっと課題に感じていることですね。そうしたことの積み重ねで、広告費をまったくかけなくてもPV数を確保できるような媒体に育てていくことが、今後の大きな目標でしょうか。

吉田:PV数のランキングでいいますと、必ずしも最新記事が上位に来ているわけではなく、過去の記事も結構読まれていることがわかっています。その意味では、新旧記事のバランスはよいところにあるといえるかもしれません。

井上:マンネリ化を防ぐために、既存のカテゴリー内でも新しい切り口は常に模索していますが、7月末にキャリアというカテゴリーを増やし、記事を充実させつつあります。また、まだ日本では根付いていない子供に対するお金の教育分野で新たな企画を展開したいとも思っています。

いずれにしても、認知度の点ではまだ足りないと感じていますし、試行錯誤する中で、費用をかけずに読者を確保できる自立した媒体となるように努力しています。そのために、同じ話題を扱った記事でも他の媒体との間でアクセス数の差があるとしたら、何が違うのかということを地道に検証することもしていきたいと思っています。

そうした多角的な取り組みの総合的な成果として、月間ベースでPV数を100万件、自然流入を数十万のレベルにして口座開設数につなげることを目指しています。

お話を聞き終えて

インタビューを通じて、「SODATTE」は、ある意味で「無欲の勝利」的に拡大してきたことがわかりました。そして、今後は、金融機関としての節度と社会貢献的なスタンスも保ちながら、SEO対策などの要素も採り入れることで、さらに羽ばたこうとしています。地道に信頼できる情報ソースとしてのポジションを築いている同サイトも、コンテンツマーケティングの1つの姿なのです。

 

●Interview & Text : 大谷 和利

●Photos : 太田 篤志 / INFOTO / amana

 

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