インテル『iQ』のグローバルコンテンツマーケティング戦略の内側

インテルと聞けば、おそらくほとんどの人がPCを動かすチップのことを考えます。けれども、このブランドはそれだけではありません。

彼らのコンテンツマーケティングの取り組み、ウェブマガジン『iQ』は、テクノロジーというレンズを通して一般的に関心のあるトピックを扱うことで、インテルのイメージを再構成しようとしています。都市でのサイクリングをより安全にする方法からワインのテクノロジーペットの人工装具に至るまで、デジタルライフのさまざまな曲面にインテルがどのように力を与えているかを明らかにする、個性的なストーリーを語っています。

これまでのところ、このテックカルチャーマガジンは大きな一歩を踏み出しているようです。月間300万近くのユニークユーザというトラフィックを生み出しただけではなく、スマートなデータサイエンスと戦略的な配信計画によって、バランスの取れたコンテンツを生み出すことでブランドのイメージを変えることに成功したのです。

インテルの従業員が企画したサイトとして2012年に米国で立ち上がったiQは、世界中のまったく異なる18都市をターゲットにするサイトに成長しました。私たちはインテルコーポレーションのグローバルコンテンツ及びメディアストラテジストのLuke Kintigh氏から話を伺い、iQが確固たるコンテンツ戦略にフォーカスしながら、いかに世界中にブランドメッセージを届けているのか、そして戦略の中で、どのようなことに挑戦しているのかを学びました。

グローバル編集戦略を確立する

言語の壁、文化的なニュアンスや時差によって、ブランドのミッションは簡単に失われてしまいがちです。だからKintigh氏は「iQの編集バイブル」と呼んでいるものに準拠しているのです。

「私たちには35ページ程度のドキュメントがあります。このドキュメントは、文章のトーン&ボイスから、記事のリード文や要点をどのように書くかまでを網羅していて、私たちがやること、やらないことを明らかにしてくれます」と、Kintigh氏は述べました。「サイトに関わる人、全員にこのドキュメントが手渡されます」。

この基本的な戦略ドキュメントは、ライターや編集者、デザイナーの他、iQのコンテンツ制作、発行、配信に関わるすべての人々が使用しています。

「もちろん、説明責任や、フォローを行う必要はあり、継続的に改善するためのブレインストーミングが不要ということではありません。グローバルな規模で、日々の業務を管理することはタフな仕事ですが、それは可能なのです」とKintigh氏は述べます。

「時差を考えると連絡を取るのは難しいことですが、私たちはいくつかのチームに分かれ、各地域の編集者と連絡を取ったり、編集者の小グループを作ることができるようにしています」。

「一番よく機能するのは、ワークフローツールや編集カレンダーのシステムを介して、毎日のコミュニケーションを処理することです。それによって、電話ではアイディア出しやブレインストーミングに集中出来るようになります。各チームは木曜日ごとに情報の更新を行い、その週に行うべきことを明らかにし、翌週以降に起こることを確認できるようにしています」。

「私たちはワークフローツールを使って、できるだけ多くと連絡を取ろうとしています」とKintigh氏は言います。「さまざまな種類のものを簡素化すればするほど、建設的な対話のための電話に時間をかけることができるようになります」。

あなたのiQを進化させるヒント: グローバルなコンテンツ展開を行っている場合でも、米国内の他のオフィスのチームと作業している場合でも、編集上の独自性、文章のトーン&ボイス、あなたの価値をどのように伝えるか…などがまとめられた基礎的なドキュメントがあることを確認しましょう。始めようと考えている段階ならば、NewsCredによるガイド「コンテンツマーケティングの戦略をドキュメント化する方法」が参考になります。

「一度拡大が広まると、すべての人を同一ページ上に集めなくてはいけません。望むなら、プレゼンテーションやビデオでも可能ですが、ミッションの元に人々がまとまるための何か、誰に向けて書くのか、が必要です」とKintigh氏は語りました。

世界中にアピールするコンテンツを作成する

18の異なる市場に向けて、それぞれの市場の地域性に対する妥当性を持ったコンテンツを生成する、しかも同時に生成するにあたって、どのようにリソースを最大化させればよいでしょうか。Kintigh氏は、すべてのサイトでストーリーを翻訳して調整することと、各地域向けにローカライズされたコンテンツを作成することの組み合わせが必要であると述べています。

「フルタイムの編集者と12~15人の寄稿者が用意できているので、私たちは北米向けに多くのストーリーを制作しています」と彼は述べました。「これらの記事を翻訳するのは、各地の編集者次第です」。

グローバルにアピールするコンテンツを制作することで、iQはストーリーから大きな利益を得ることができました。たとえばHedy Lamarrの記事は、あらゆる市場で良いパフォーマンスを示しています。

「今日使われている革新的なテクノロジーを、開発の最先端にいた女性がどのように作り上げてきたのかという、テクノロジーのバックストーリーを世界中のオーディエンスは強く求めていました。Hedyの記事では、ほとんどの部分が語られていませんが、地域や背景に関わらず、すべてのオーディエンスによく響くところがあったのです」とKintigh氏は述べました。

この投稿は米国サイトで101,000ビュー、グローバルサイトでは133,000ビューを集めました。

 

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米国以外のサイトが作ったコンテンツが、北米で実に上手くいった例もあります。チェコのiQサイトが制作した「3D Fashion Technology Brings Sci-Fi to the Runways」が一例です。米国版では193,000ビュー以上を獲得しました。

 

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あなたのiQを進化させるヒント: リソースを賢く使い、すべてを土台から作り直すようなことをしないようにしましょう。グローバルなコンテンツ制作について戦略的になり、オーディエンスを知ることで、各市場で良いパフォーマンスを示すコンテンツを制作出来るようになります。これは各地域ごとに独立した編集チームが作業するよりもはるかに効果的です。

地域向けカスタマイズと配信を許可する

しかしながら世界中へコンテンツ配信することは、テキストをさまざまな言語に翻訳するだけという簡単な作業ではありません。Kintigh氏は、文化的な違いや、さまざまなオーディエンスのコンテンツの消費の仕方の違いを理解することが極めて重大であると述べています。

「たとえばポーランドのようなヨーロッパの一部の地域では、コール・トゥ・アクションを備えた、よりマーケティングタイプのコンテンツが好まれているように見受けられます。ポーランドのオーディエンスはマーケティングタイプであることを気にかけていないようです。一方で、北米では、オーディエンスへの最初のアプローチに注力しています」。

iQがコンテンツを地域ごとにどのようにカスタマイズしているかは、英国と米国の両方で公開されている記事に明白な例を見ることができます。英国版では「What Do William Shakespeare, Andy Serkis and Intel Have in Common?」というタイトルが付けられ、米国版は「Tempest Tech: Shakespeare Doth Digital」というタイトルが付けられました。

「米国では見出しに“Intel”は使用しませんでした、そして、ほとんどのアメリカ人はAndy Serkisをそれほど知りません」とKintigh氏は述べています。

また英国版では、インテルのパートナーであるImaginariumとRoyal Shakespeare Companyが記事の中心となっていますが、米国版のストーリーでは、技術が優先的な内容となっています。

 

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ストーリー構成だけではなく、地域別チームは、世界各地でモバイルがどのように普及しているかを理解する必要があります。Kintigh氏がAPJ市場と呼んでいるインド・オーストラリア・日本では、コンテンツ視聴時間の約80〜90%は、モバイル端末で見られています。米国では、およそ60〜70%の範囲内です。そのためアジアでは、コンテンツを短く、ビジュアル重視にしてモバイルフレンドリ―にする傾向があります。

配信チャネルも非常に異なります。TwitterやFacebookは、どこからでもアクセスできますが、米国iQで使用されているOutbrainやTaboolaのような特定の配信チャネルは、他の市場ではアクセスできません。

あなたのiQを進化させるヒント: グローバルなコンテンツチームを率いるときは、各地域の編集者を信頼することに躊躇ってはいけないとKintigh氏は語っています。「iQが世界中に拡大した初期段階では、本社で戦略立案と大部分の施策の指示を行っていましたが、次第にその役割を地域に広げました」。

「現地チームは地域の事を本当によく知っているので、指示は彼らに頼っています」とKintigh氏は言います。「オーディエンスにより有効になりそうなものにもとづいて、何を公開するのかということについて、地域には、より柔軟性を与えています」。

国内外の成功を計測する

18のサイトを維持するにあたっての大きな課題のひとつは、どのようにしてパフォーマンスをトップレベルで見るかということです。もちろん、最もシンプルな方法はトラフィックの増加を見ることとです。

「iQネットワーク全体で、10月と11月の各月で約2.8~3百万ユニーク訪問者を生み出しました」とKintigh氏は述べています。「昨年の同時期では約2.3~2.5百万でした。最終的に、iQサイトの数は変わらず、約25%トラフィックを増やしました」。

しかし、トラフィックデータだけでは全体の話はつかめません。次に行うことは何でしょうか? iQではオーディエンスのための戦略を、リテンションにもとづいたものに移行し、コアになるKPIとして、メールのサインアップ数に注力しました。

最も重要な指標が何であるか、どのようにその指標を継続して計測し続けるかを判断するには、大きな学習曲線があるとKintigh氏は言っています。そのために、彼のチームでは、まず北米で新規導入と実験を行い、各地域で実行できるベストプラクティスを採用するようにしています。「過去6カ月間、私たちはコンバージョン率に関するベンチマークデータを見てきました。コンバージョン率は最終的なKPIであり、メールのサインアップをどのように増加させるべきかについて、さらに進化した知見を得ようとしているのです」。

彼のチームはまた、記事をスクロールした際に何を読んでいるのかということや、コンテンツ上でどれくらいの時間を過ごしているのかということから、人々をどれだけ惹きつけているかを測る品質スコアの分析に多くの時間を費やしています。加えて、どのように人々をサイトに再来訪させるかに関する指標を探求しています。

「オーディエンスジャーニーの段階分けです」とKintigh氏は言います。

あなたのiQを進化させるヒント:「成功を収めるには集中管理の方法を持つことが重要です。誰もがパフォーマンスデータにアクセスできるようになると、確定したモデルにもとづいていないが、読者に響くコンテンツを発信していることを確かめることが出来ます」とKintigh氏は述べています。

「考察とデータを、予算を組み替えるために引き出し、パフォーマンスを向上させることで、これを実現できます」。

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Luke Kintigh氏: インテルコーポレーションのグローバルコンテンツ&メディアストラテジスト

「グローバル規模でのコンテンツマーケティングの成功を達成するには、成長の苦しみがないわけではありません。ただ、全体的な戦略は、どこに公開するのかに関わらず、ほぼ同じと考えていいでしょう」。

Kintighは次のようにも述べています。「速く動き、アジャイルになり、そして、その都度最適化を行わなくてはいけません」。

 

Dawn PapandreaはNewsCredの寄稿者です。

元記事「An Inside Look at Intel iQ’s Global Content Marketing Strategy」はinsights.newscred.comに2016年12月1日に掲載されました。

 

この記事はNewsCred BlogのDawn Papandreaが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

 

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