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ストラテジー

NewsCredの貴重な情報ソースから紐解く、B2B企業のコンテンツマーケティングの在り方とは? [インタビュー: 小川和也氏]

2018年1月より、日本の大手電気機器メーカー「オムロン」は、北米を主なエリアターゲットに、認知増の獲得やマーケット開拓を目的とした英語版オウンドメディア『EDGE&LINK』をローンチさせました。掲載コンテンツの中心は、NewsCredが提携している『VentureBeat』『Business2Community』『Popular Science』等の名だたるテクノロジー系メディアからのライセンスドコンテンツ(=情報ソース)。そのキュレーターを担っているのが、アントレプレナー/フューチャリストとして知られる小川和也さんです。キュレーションを始めておよそ10カ月近くが経った今、小川さんは「情報ソースの質の違いを肌で感じている」と言います。その違いとは何か? その言葉から、NewsCredが提供するソースの希少性と有益性、あるいはB2B企業のコンテンツマーケティングの在り方が見えてきます。

 

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小川 和也 氏

 

ソースの絶対量と質の差を生み出す背景

 

―― 『EDGE&LINK』に掲載する記事をキュレーションするにあたり、NewsCredが提携している多くの海外メディア/ソースを適時ご覧になっているかと思います。およそ10カ月近くが経ちますが、何か感じることはありますでしょうか?

 

これは僕が見ているテクノロジー系のメディアに限った話かもしれませんが、日本と海外メディアの質の違いを肌で感じています。

 

―― 質の違い、ですか。

 

はい。『EDGE&LINK』で取り上げている海外の記事は、「なるほどね、こんなことが起こってるんだ」っていう、ファクトケースが充実していて、僕にとっても学びが多い。「AIはこれからどうなる?」みたいな話じゃなくて。日本のメディアは、まだその議論がずっと続いています。

じつは僕、日本の、とあるキュレーションメディアにも携わっていて、日本のビジネスパーソンを対象に、取り上げたい、読んでほしいと思う記事をピックアップして、その記事に対して僕の見解や考察をコメントとして添える、という仕事をやっているんですね。選べるソースの範囲は、日本国内のメディアに限ります。片やオムロンさんは、海外ソース。つまりテクノロジーという分野で、日本と海外、両方の情報ソースを常にチェックしていることになります。その過程で「これは相当に差があるな」と感じています。というか、ソースの絶対的な量と質に差があることを確信したと言ったほうがいいかもしれません。

オムロンさんのキュレーション方針として、自社サイトをメディアとして発信していきたい、その軸としてなるべくケーススタディを増やしたいというお話があるじゃないですか。特定のテーマを深く掘っていこうと思ったとき、ケーススタディをベースにすることで伝わりやすくなりますからね。キーワード的に言えば、インダストリー4.0から始まって、AI、IoT、オペーレション、マニュファクチャリングとか。セルフドライビング、マシンラーニングとかロボティックスとか。これらって、すべからく最新テクノロジーの潮流なわけです。で、こういったキーワードのケーススタディをできるだけ多くキュレーションしていきたいよねって観点の中で進めていくと、もし日本のメディアから探そうと思うと、かなり見つからないんです。

たとえば、僕の番組(※J-WAVE『FUTURISM』)でも、先端テクノロジーをテーマとして、ケーススタディをベースにしながら取り上げる機会は多いんですね。一方で、それらの好事例というものが、メディアの中に潤沢にあるかといえば、そうではありません。そういう中で、海外メディアのキュレーションをしていると、ケーススタディの記事が圧倒的に多いことがわかる。分野によっては日本よりイノベーションが進んでいることもあるし、実際にファクトとしてのケーススタディが多いこともあると思います。

 

―― 日本でも、そういった技術的な実験や試みをやっていたとしても、その事象を取り上げようとするメディアがあまりない、ということでしょうか?

 

両面あると思います。日本は先端テクノロジーの分野で進んでいるという過信は危険で、むしろ分野によっては遅れを取り始めている、という現実もあります。とはいえ、日本でも先進的な取り組みはたくさんあるはずなんですよ。その割にはちゃんとメディアに載っていないなって。表層的な新しいプロダクツ紹介や、メディアに出やすいものがメディア内を循環している感もあり、本当に優れた取り組みをメディアが取り上げきれていない実態はありますね。

 

―― たしかに、新製品のリリース情報に注目した記事が多いイメージがあります。

 

そうですよね。「じつはうちの会社でこんな研究をしています」っていう話がいくらでもあるはずなんです。日本の企業でも、面白い事例はたくさんある。だけどなかなかメディアに取り上げられない。たとえば、僕のラジオ番組のスポンサーは凸版印刷なんですけど、印刷会社という固定概念を覆すような新技術とかイノベーションが結構あります。でも、企業のIRとかリリースを出したとしても、一般の方の目にはなかなか触れない。だから、それをどのようにキャッチして伝えるかというナビゲーター、キュレーター、そしてメディアの役割は重要だと思うんです。そこで起きていることと、取り上げるメディア側との乖離が大きいんでしょうね。海外のソースを見ていると、幅広い分野で事象をきちんと取り上げる記者やライターがいて、それを知りたい読者がいる――その構造が確立されているんだと思います。

 

―― これまで小川さんは執筆者や監修者という立場で出版社を中心とした多くのメディア企業とお仕事をされています。その差というのは、どのような背景や要因によって生じていると思いますか?

 

ひとつは、メディアが広告を背景としている側面が強いからだと思います。マネタイズの手段として広告に依存する結果、Webメディアであれば、なんだかんだとPV主義になる。それぞれのメディアの在り方や使命感、大義名分があるはずですが、結局のところは人気ランキングの上位に入るような記事が“良し”とされがちです。良質な記事をどれだけ多く出せるかという使命で立ち上げたはずのビジネス系メディアでも、PVが稼げるのは、結局のところ過激なタイトルや週刊誌的な記事。「読み手が好むので」というジレンマから脱却し、本当にビジネスマンが読まなくてはならないこととか、骨太の記事というものがなかなか浮かばれない。

 

―― メディア企業の収益構造がソースの質にも影響を与えるということですね。

 

オムロンさんのキュレーションをやっていて思うことがあります。広告収益目的ではないメディアこそが、その悪循環から脱出できるのではないかと。たとえば、『EDGE&LINK』は広告を稼ぐことが目的でもない。先端技術を深掘りした記事だったり、ビジネスに役立つ記事にこだわって配信していて、そのメディアを運営することでビジネスマンに支持され、結果として企業の価値作りに繋がればいい。そんなスタンスのほうが、純粋に良い記事にこだわれる。広告収益を追求せねばならないメディアだと、どうしてもPVや広告の影響を受けやすい。だからこそ、オムロンさんのようなB2B企業が運営するメディアで、かつ自社の宣伝ありきでないと振り切った場合、情報の質に主眼を置くことができるのかなと。しかるべきインダストリーのキーマンや、マネージメント職以上の、企業のエグゼクティブが読むべき情報をキュレーションして役に立つことが第一。そういうスタンスの非メディア企業にしか作れないメディアがあると考えています。

 

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企業が発信する情報こそが信頼できる時代へ

 

―― お話を伺っていると、一方の側面ではNewsCredのソースが非常に希少性と有益性の高い情報であるということが、あらためてわかります。

 

たくさんのソースを集めて、バンドルして、CMSを構築して、そのCMSを企業に導入してもらうプロセスを一気通貫することは難しいですね。とくに一番引っかかるのはソースですよね。海外のソースの権利処理となると、一筋縄にはいかないですから。

それが、NewsCredのサービスを日本で活用することができると、日本のビジネスマンにも有益な情報を届けられる。それをメディア企業が広告収益目的にやるんじゃなくて、日本のレガシーな企業だったり、先端的な技術を持った企業が、ビジネスマンの役に立てば良いというスタンスで情報を発信していく。テレビCM等の各種広告宣伝に、莫大なお金を使っている企業は多いわけですが、『EDGE&LINK』のようなメディアを運営することで、それとは違う形でマーケティング活動に繋がっていくと思うんです。広告費を稼がなくて良いメディアで、良質な記事を届けることでこそ叶う、読者との結びつき。その結果として得られる企業と読者のエンゲージメントみたいなものですね。

 

―― たとえばNewsCred本国のクライアントで、製薬メーカーの「Pfizer」が『GET OLD』というオウンドメディアを運営しています。健康やウェルネス、高齢化社会に向けた様々な知的情報が掲載されており、いちメディアとして確固たる地位を築いていると聞きます。

 

しかるべき企業が運営しているメディアだからこそ、信頼がおけるケースですね。まさにコンテンツマーケティング的。ただ、発信する側の企業としては、情報の質や精度の担保が当然求められます。

 

―― NewsCredのソースに絶対的な価値と信頼があるからこそ、その期待に応えられているんでしょうね。

 

日本は先進国であるという思い込みは捨てなくちゃいけない。むしろ先端技術においては、海外との情報格差がどんどん広がっている実感があります。『EDGE&LINK』のキュレーションをやるようになって、それくらいの危機感を覚えるようになりました。決して日本のメディアが悪いと言っているわけではありません。メディアはメディアとして生計を立てないといけない部分において、第二勢力じゃないですけど、メディアを主業としない、オムロンさんのような、新しい技術を開発しているB2B企業がスポンサードしながら、質の高い情報源を企業自体が担って発信していってほしい。だからこそ、オムロンさんには期待したい。むしろ(オムロンさんは)やらないといけないんじゃないですか。それと、英語版を日本向けに展開してほしいです。海外のソースを日本のビジネスマンもキャッチアップしないと、自分たちが世界の中で、いまどこにいるのかっていう“現在地”を見失いかねないですからね。

 

―― 「日本向けに展開してほしい」という小川さんの言葉は、裏を返せばとても貴重な情報源をキュレーションしているということですよね。

 

相当数のメディアから大量の記事の中を泳いで、そこからキュレーションして、ポリシーに沿った記事を見つけて、ようやく『EDGE&LINK』が成り立っています。特定のメディアだけを対象としていては、あれだけの記事は毎回出てこないですね。

僕自身、そのキュレーターをやっていて、すごく面白いなって思うところがあります。情報量は増える一方ですから、情報を整理して届けることの意義がある。キュレーションする価値って、そこにあると思います。だって、もしこれを皆さん一人ひとりがやっていたら、かなりしんどい。出会えない記事にもたどり着くことができますし。僕が、無数にある記事の中から「これは」っていうものをキュレーションすることで、皆さんは、僕が費やした時間をショートカットして記事と出会える。それを一人でも多くの人が享受できれば、それでいいんですよね。裏で僕は散々海を泳いでいるんですけど、皆さんは、泳ぐ時間を短縮できる。

企業によってキュレーション方針、タグのジャンルも含めて、企業毎に色があるじゃないですか。オムロンさんにも「なるべくケーススタディを増やしたい」という明確なキュレーション方針がある。そういう色が企業毎に打ち出されてオウンドメディアが活性化されていくと、情報ソースとして有益だし、メディアの特徴が出る。アグリゲートして、色々な企業のキュレーションが一覧化されていくと面白いでしょうね。

 

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小川 和也(おがわ・かずや)

グランドデザイン株式会社 代表取締役社長。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。アントレプレナーとして独創的なアイデアで新しい市場を切り開く一方、フューチャリストとしてテクノロジーに多角的な考察を重ねて未来のあり方を提言している。2017年、世界最高峰のデータ・マーケティングアワード「DMA国際エコー賞」を受賞。北海道大学客員教授として人工知能研究に従事するほか、J-WAVE『FUTURISM』(毎週日曜日21:00〜21:54)では番組ナビゲーターとしてテクノロジーや未来を紐解き伝える活動を行っている。人間とテクノロジーの未来を説いた著書『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)は、高等学校現代文B文部科学省検定済教科書を始めとした多くの教材や入試問題にも採用され、テクノロジー教育を担う代表的論著に。その他著書・連載多数。

 

白土 啓はamanaのコンテンツディレクター/キュレーターです。

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