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ストラテジー

味噌の老舗マルコメが仕掛ける、コンテンツからECへのスマートな導線 [デジタル・エンゲージメント vol.2]

コンテンツマーケティングにおいて核となるのは、消費者と企業・ブランド間のエンゲージメントです。そこで本コラム「デジタル・エンゲージメント」では、テクノロジーライターの大谷和利さんが、国内外の先進的なマーケターたちが創造性を駆使して編み出したエンゲージメントを高めるための工夫を連載形式で紹介。読者の皆さんに新たな視点や気づき、アイディアを提供していきます。vol.2の今回は、古い歴史を持ちながら、最先端のコンテンツマーケティングを実践し、時代の変化に即したブランド作りに真摯に取り組んでいる味噌の老舗「マルコメ」に迫ります。

 

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国内トップクラスの作り込み

味噌などの発酵食品を中心に事業を構成し、一定の年齢層以上には、マルコメ君という伝統的なマスコットキャラクターで馴染深いマルコメ株式会社(以下、マルコメ)。連載の2回目は、この国民的ブランドを採り上げることにした。

その理由は、1854年(安政元年)創業という古い歴史を持ちながら、最先端のコンテンツマーケティングを実践し、時代の変化に即したブランド作りに真摯に取り組んでいると感じられるからだ。

たとえば、2016年にスタートしたDJ Marukomeというプロジェクトは、マルコメ君をDJに見立て、音楽コンテンツやプロモーションビデオによって、若者たちにマルコメブランドを再認識してもらう狙いがある。

DJ Marukomeの音楽活動は、味噌汁が作り出す日々のリズムや、ダンスフロアの雰囲気を温めるDJと心をほっこり温める味噌汁の共通性などがテーマとなっているものの、基本的には畑違いの分野への果敢な挑戦といえる。しかし、こうした意表をつく動きも駆使して消費者とのエンゲージメントを高めようとする同社のコンテンツ戦略は、大いに注目に値する。

実際の同社のコンテンツマーケティングは、DJ Marukomeのように少々尖った飛び道具も使いつつ、基本はオンラインでやるべきことをできる範囲でしっかり行うというポリシーに貫かれている。その意味で、この分野におけるマルコメの作り込みは、国内トップクラスと捉えてよい。

 

01. DJ_Marukome.jpg

▲2016年に活動を開始し、最近になって「ゆるふわギャング」とのコラボでLINE Recordsからデビュー曲をリリースした、マルコメの音楽プロジェクトDJ Marukome。

 

必要な範囲で満たされた「元素表」

実はマルコメは、過去に、コーポレートサイト、コミュニティサイト、ショッピングサイトを個別に開設し、後2者の利用には異なるIDが必要な状況にあった。だが、今年の6月13日にサイト全体を統合リニューアルして必要なIDも1つにまとめ、それによってメルマガの登録や解除も任意に行えるようにしたのである。

ここで、前回のコラムで解説した「コンテンツマーケティングの元素表」を思い出していただきたい。これに沿って説明すると、まず、マルコメのコンテンツマーケティングは、認知段階で、Spことソーシャルポストと、Bpことブログポストの双方をきっちり押さえていることが特徴だ。

Spでは、Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeというメジャーなSNSを網羅しており、同じコンテンツを巧みに流用しつつも、それぞれ、速報、説明、ビジュアル中心のレシピアピール、CMやレシピ動画の配信というように、特性を生かした訴求が行われている。

 

▲Spことソーシャルポストは、Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeと4大SNSをすべてカバー。

 

また、メインサイトのレシピやコミュニティ、その中のトークルームと呼ばれるセクションは、タイムリーに更新されるBp、つまりブログポスト的な役割を果たしており、オウンドメディアとして消費者の興味を掻き立て、エンゲージメントを高めている。

 

▲メインコンテンツの1つであるレシピは、提案型のBp、つまりブログポスト的なものと考えることもできる。

 

▲コミュニティもマルコメが力を入れる参加型のコンテンツ。やはり、ある種のBpとして集客に貢献させる意図がある。

 

▲コミュニティコンテンツの1つであるトークルームは、ユーザーが直接コメントを書き込むこともでき、最もBpらしい作りになっている。

 

興味段階のコンテンツとしては、Neことニューズレターに相当するメルマガや、WbことWebページの充実はもちろんだが、「発酵美食」というWebマガジンを通じて、注目のレストランを紹介したり、料理研究家や化粧品会社のスタッフを交えたアドバイスや発酵座談会など、Ro(ラウンドアップ)やInt(インタビュー)に相当する情報も充実させつつある。

その他のWebページの項目自体はオーソドックスではあるが、並べ方やスクロールに頼らない見せ方などに工夫があり、画面遷移を容易にすることで使い勝手を向上させて、次々にコンテンツを見たくなるような設計が素晴らしい。

当然ながら、最終的にはサイトの訪問者を購入者へとコンバージョンすることが目的となるが、それも、レシピやコミュニティの情報を閲覧していくと、自然に、その並びにあるオンラインショップも覗いてみようという気にさせる構造になっている。

 

▲発酵食品の魅力を伝えるWebマガジンの「発酵美食」には、座談会や取材記事が含まれ、Ro(ラウンドアップ)やInt(インタビュー)の要素もある。

 

▲WbことWebページのトップには、キャンペーンや新商品、工場見学のお知らせなど、その時々で最も推したい5つのコンテンツの案内が横スライドで自動的に表示される(図は、そのうちの2つ)。

 

▲筆者がとても見やすいと感じたWbトップの上端にある「ニュース」から「企業情報」までの8つのメニューは、リンクされたコンテンツへの入り口となる内容が、ページのスクロールやジャンプではなく、プルダウンで表示される。簡単でストレスのない切り替えや閉じ操作が可能だ。

 

▲レシピやコミュニティを閲覧した流れの先にオンラインショップのメニューがあり、AmazonやLOHACOの外部ショップと、自社のオンラインショップの差別化も図られている。

 

▲食育への取り組みや研究開発など、独立させても良いようなコンテンツも、あえて企業情報にまとめてWebサイト全体の見通しを良くし、伝えるべきメッセージを明確化するための工夫が感じられる。

 

さらに、検討段階の消費者に対しては、Pr(プレスリリース)に相当するニュースや、Re(リサーチ)に該当する研究開発ページ、そして、改善事例のページがエンゲージメントの向上に貢献する。

特に最後の改善事例は、単に商品を開発して終わりにしないマルコメの姿勢がダイレクトに伝わってくる部分であり、シンプルだが、とても興味深いコンテンツに仕上がっている。

 

▲Prにあたるニュースは、ニュースリリース、自主回収などの重要なお知らせ、それ以外の告知事項をまとめてトピックスに分かれており、必要な情報にたどり着きやすくなっている。

 

▲Reにあたる研究開発は、企業情報からリンクされているが、このようなコンテンツに興味を持つ人はすでにエンゲージメントが高まっているため、多少見つけにくいところに位置していても、さほど問題とはならないだろう。

 

▲Csことケーススタディとしてはやや変則的だが、顧客からのクレームに対して具体的な改善点をまとめた改善事例は、ある程度エンゲージメントが高まっている人に対して、さらに信頼感を増す役割を果たす。

 

まとめ

まだ、リニューアルしてからの日が浅いせいか、オウンドメディア内での「いいね」やコメント数はSNSなどに比べてかなり少ない。しかし、今後、SpからのLp(ランディングページ)を整備するなどして充実させ、提案したレシピ情報を再編集の上でEb(eブック)やBk(ブック)にまとめて発行できれば、より完全な形でのコンテンツマーケティングを実現できるだろう。

いずれにしてもマルコメの事例は、コンテンツマーケティングが新興企業のものだけではないということを鮮やかな実践を通じて証明しており、これからこのマーケティグ手法に挑戦しようとする会社はもちろん、すでに手がけている企業にとっても大いに参考になる存在である。

 

※文中で掲載している写真・図版は、すべてマルコメ公式サイトDJ Marukome公式サイトからのキャプチャになります。

 

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大谷 和利(おおたに・かずとし)

テクノロジーライター、AssistOn取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ウォズニアックのインタビュー記事をはじめ、コンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のアドバイスなども行う。主な著書・監修書に『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)、『ICTことば辞典:250の重要キーワード』(共著。三省堂)、『ビジュアルシフト』(監修。宣伝会議)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(同文館出版)。主な訳書に『Apple Design日本語版』(AXIS)、『スティーブ・ジョブズの再臨』(毎日コミュニケーションズ)。

 

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