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大塚製薬が行うユーザー中心のサイト設計とコンテンツづくりを紐解く

ポカリスエット、オロナミンCドリンク、カロリーメイト、ファイブミニ……。大塚製薬株式会社は、誰もが知っているこれらの製品の製造・販売と、医療用医薬品の製造・販売の両輪で事業を展開している、日本を代表するグローバル企業です。会社の顔となるコーポレートサイトでは製品情報はもちろんのこと、「社員が語る」では動画付きの社員インタビュー、「健康と病気」では一般の方が健康や病気に関する情報を得られるコンテンツも発信。情報が分かりやすく整理された、ユーザー中心のサイト設計となっています。

大塚製薬ではどういった意図のもとにサイトやコンテンツを設計し、運営を行っているのでしょうか。広報部の松野紘子さんと、久保輝佳さんのおふたりに、ユーザー中心のコーポレートサイトづくりについてお訊きしました。

 

コーポレートサイトは大塚製薬とのさまざまな接点への「ハブ」

松野紘子さん(以下、松野):コーポレートサイトの目的は、会社の理念や事業内容、販売している製品に関する情報を発信し、大塚製薬がどの様な会社かを知ってもらうことです。そのため、『コーポレートサイトではファクトを提供する』という点を重要視しています。

 

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大塚製薬株式会社 広報部の松野紘子さん

 

松野:ユーザーはさまざまな目的を持ってコーポレートサイトを訪れます。たとえば、製品情報を知ることが目的の方もいますし、医療従事者向けの情報を求められている方、投資家の方、採用情報を見たい方もいます。これらの情報は、コーポレートサイト内に掲載していることもあれば、専用のサイトで情報公開をしている場合もあります。大塚製薬の場合、合わせれば100以上のWebサイトやSNSアカウント、アプリ等を運用しているため、目的のコンテンツへ橋渡しする『ハブ』として機能することも重要なのです。

現在のサイトは2017年末にリニューアルされたものだそうです。

松野:以前のサイトでは、ナビゲーションに課題がありました。たとえば、現在は「CSR」というメニューになっているものは、かつては「私たちができること」という伝え方にしていました。以前のサイトも並々ならぬ熱量を持って作り込んだものでしたが、自分たちの独特な言い回しが一般の方にとっては分かりづらかった可能性についても追及しました。リニューアルに向けて、ユーザーの動きをより意識した設計を心がけました。

 

リニューアルではユーザー中心の設計にこだわった

では、リニューアルの際にどのような動線設計の工夫を凝らしたのでしょうか。

松野:大塚製薬では「医療関連事業」と「ニュートラシューティカルズ関連事業」の中心的な2つの事業を両輪事業と表現しており、多様な事業を展開しているので様々なステークホルダーが想定されます。メニューの名称や位置をいまの形に決定するまで本当に悩みました。

 

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大塚製薬コーポレートサイトのトップページ

 

松野:グローバルメニューは次のように設計しました。まず、サイト最上部の黒い帯では「何をしたい人なのか」によってメニューを分けました。ユーザーの属性別というイメージです。その下の白い帯は「会社として発信したい情報」を並べています。

また、大塚製薬のコーポレートサイトでとくに目を引くのは、アプリの通知のようなUIとなっている左側のアイコンです。

松野:PCで見たトップページの画面左側、またはスマートフォンのトップページ下部に追従するサブメニューのカラフルなアイコンは、更新情報やその件数がバッジで分かりやすく伝わるように意図しています。数々の情報が掲載されているサイトでは、何が新しい情報なのかがパッとは分かりづらいでしょう。そのため、誰が見ても「これが更新情報なのか」と分かってもらえるようにしたいと思いました。例えば、「新着情報」のアイコンは空港などのインフォメーションカウンターやRSSをイメージしました。アイコンのデザインも、分かりやすさにこだわり何回もリテイクしました。

リニューアルサイトではレスポンシブデザインを採用しています。

松野: 2015年以降、スマートフォンからのアクセスはどんどん多くなっていきました。その変化に対応しないままでは、当然ユーザーの使い勝手は損なわれてしまいます。今まで自分たちの伝えたいことに注力していた部分を「ユーザー中心」に考えることにも重きをおき、ひとりの消費者として大塚製薬のサイトに接した際にどう見えるか、という点にこだわりました。

 

「健康と病気」のコンテンツが自然検索に強い理由

大塚製薬のコーポレートサイトは「健康と病気」などのコンテンツも充実しています。コンテンツマーケティングを意識したサイト運営を行っているのでしょうか。

松野:コンテンツマーケティングは比較的最近の言葉だと思いますが、実は健康や病気に関する情報は20年以上前のサイトオープン当初から発信していました。「コンテンツマーケティングをしなければ」という発想は、今もありません。大塚製薬は医療用医薬品も扱っているので、健康や病気に関する情報を欲している方のために丁寧かつ参考になる内容を発信しなければならないと当初から考えてきました。

松野:実際のコンテンツ制作には多くの人が関わっています。主導するのは私たち広報部ですが、コンテンツ内に製品情報が必要な場合は関連事業部と一緒に制作します。また、疾患に関する内容であれば専門家による監修も必要です。最終的なチェックでも別の者が入りますし、多くの人が目を通すことで、分かりやすく正確なコンテンツづくりを行っています。

では、更新の頻度はどれくらいなのでしょう。

松野:コンテンツ制作は毎月という頻度では行っていません。ただ、たとえばコンテンツによっては最新のデータを追加したり、季節的にトップページで目立たせたりするものはあります。載せる情報に関しては、会社の顔であるトップページを魅力的に見せるために、久保が常に工夫を凝らしてくれています。

久保輝佳さん(以下、久保):そうですね。メンテナンスも含めれば、毎日何かしらの更新は行っていると思います。

 

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大塚製薬株式会社 広報部の久保輝佳さん

 

久保:たとえば、夏であればポカリスエットといったように、時期的に需要が増える製品に合わせて掲載するバナーを決めたりしています。

松野:それから、たとえば結核予防週間など、世の中には疾患についての理解を広げるきっかけとなるキャンペーンもありますので、その期間に合わせてトップページにバナーを掲載したりします。また、昨年や今年の夏は特に暑く、熱中症に関する情報の需要が高かったので、「健康と病気」の熱中症コンテンツへの動線をトップページに載せていました。時期に合わせて、必要だと思われる情報をユーザーにしっかり届けることを意識しています。

 

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「健康と病気」の熱中症を解説したコンテンツ

 

松野:「健康と病気」を読むためにコーポレートサイトを訪れる方も多いですね。検索からのオーガニック流入が多いのが特徴です。コーポレートサイトへの他の流入理由としては、製品の栄養成分やアレルギーの情報、薬との飲み合わせなどの情報を気にして訪れることが多いように見受けられます。

企業がコンテンツ発信を行う際の悩みとして自然検索が伸びないというのはよく聞く話。そんな中、自然検索からの流入を多く獲得しているのは驚きです。コンテンツ制作の上で注意しているポイントはあるのでしょうか。

松野:病気の解説コンテンツでは、専門用語がいっぱい並んでいて分かりにくいものもあると思います。そこで、やわらかいタッチのイラストなどを多用して、分かりやすく伝わるように意識しています。でも、これは特別な考え方ではないと思います。自分たちが見たときにも分かりやすいものを作るという目線で制作していますが、図解してあった方が理解しやすいと考えるのは自然ではないでしょうか。

 

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松野:これまで、大塚製薬がどのような会社かといった情報発信はあまり行っていませんでした。どちらかと言えばポカリスエットやカロリーメイトなどの製品ブランディングが中心で、コーポレートブランディングに積極的ではありませんでした。

コーポレートサイトでは、ニュースリリースの配信に加え、ポッドキャストなどを活用した積極的な企業情報の発信を行っていると言います。

松野:ニュースリリースの作成には、会社としてのニュース配信に向けて、並々ならぬこだわりをもって広報部全体で関わっています。コーポレートサイトの使い勝手が良ければ、配信したニュースもユーザーの目に留まりやすいかと思いますので、広報部全体のチームワークが成せるコーポレートブランディングへの取り組みと考えています。また、ニュースリリースとは別に、世界各地で大塚が関わった出来事について情報発信しているWhats & Whosというコンテンツがあり、これらの記事内容は音声化し、ポッドキャストでも配信しています。

さらに、社員インタビューのコンテンツ内では動画も活用しています。

松野:このコンテンツも、動画を採用することが流行だからという理由で始めたわけではありません。会社の理念や成果を伝えるコンテンツを企画する場合、活躍している社員を通じて情報を発信するのが効果的です。社員の熱意が伝わる方法は何かと考えると、文面と写真だけよりは、動画も活用した方が社員の人となりを含めてストーリーが伝わりやすいでしょう。流行しているからやる、という観点はあまり大塚製薬にはないですね。

 

大塚製薬の考えかたの根幹を伝え続けたい

リニューアル後のコーポレートサイトには確かな手応えを感じているそうです。

松野:年末に公開されるトライベックさんのWebユーザビリティランキングで、リニューアル前年は145位だったんです。それが昨年2018年のランキングでは17位まで上昇していました(参考:『Webユーザビリティランキング2018 企業サイト編』)。こういったランキングなどはあまり気にしてこなかったのですが、外部から評価されたことでリニューアルが効果的であったことを実感しました。

逆に、現在課題と考えていることはあるのでしょうか。

松野:そうですね……。Web界隈では、どんどん新しいサービスやツールが出ています。Web解析系、RPAや接客ツールなど、国内外で様々なものがありますよね。CMSもいろいろなものがあると思います。そうした最近の活発な変化を意識する中で、流行には流されまいと思いつつも、気になるツールがたくさんありますね。どれを使ったり組み合わせたらサイト運営がより良くなるのか、悩みがつきないのが悩みでしょうか(笑)。

最後に、コーポレートサイトでこれから取り組んでいきたいことを松野さんにお訊きしました。

松野:私たちは、コーポレートサイトを通じて「大塚製薬がグローバルなトータルヘルスケアカンパニーであること」を伝え続けたいです。トータルヘルスケアカンパニーというのは、人の健康に関することすべてに携わっているということ。疾病の診断から治療まで担う医療用医薬品を研究開発し提供すること、日々の健康維持や健康増進をサポートする栄養製品や健粧品*を展開することといった、身体全体を考えることに大塚製薬は取り組んでいます。そのためのコンテンツとしては、大塚製薬の理念を理解してもらうためのものを強化したいですね。この目標は今までもずっと変わっていませんし、これからもずっと変わることはないでしょう。

*健粧品(Cosmedics):cosmetics(化粧品)+medicine(医薬品)

●Interview & Text : 弥富 文次

●Photos : 多田 圭佑

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