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Nikeの広告が大成功を収めた理由: Colin Kaepernick選手を起用した背景を探る

レイバー・デー(9月の第1月曜日の休日・労働者の日)が休みだった幸運な人々が、空港ターミナル、道路、または電車のホームに集まるさなか、Nikeは2018年度で(あるいは過去30年で)もっとも素晴らしい広告を静かに公開しました。

Nikeの象徴である「Just Do It」スローガンの30周年記念キャンペーンに、NFLサンフランシスコ・フォーティナイナーズの元クォーターバックで、当時は渦中の人物でもあったColin Kaepernick選手を起用したのです。このキャンペーンには彼の他にも、Odell Beckham Jr選手、Serena Williams選手、LeBron James選手など、目覚ましい活躍を見せるアスリートたちも起用されています。

「『何かを信じろ。たとえそれですべてが犠牲になるとしても』という言葉は、ブランドスローガンにしてもいいほど素晴らしく、Colin Kaepernick選手以上にこの言葉が似合うアスリートはいませんでした」とニューヨークを拠点とするコミュニケーション・マーケティングコンサルタント企業Mulberry & Astorの社長であるChris Allieri氏は言います。「Nikeの意図は、タイムリーに正しいことをすることです。時に、そうした行動は、炎上のリスクさえも上回ります」。

Kaepernick選手は、自身をリーグから追放し、新しいチームとの契約を組織的に阻んでいるとしてNFLを提訴している最中のため、広告のタイミングはより強く心に訴えかけるものになりました。彼は、NFLがこうした行動に出るのは、2016年に彼が始めた、警察官の人種差別的な暴力に対するフィールド上での抗議行動によるものだと主張しています。Nikeの広告では、Kaepernick選手の白黒の顔写真の上に「何かを信じろ。たとえそれですべてが犠牲になるとしても」という言葉が刻まれており、彼の法廷闘争を直接的に支持しています。Kaepernick選手のNFLに対する訴訟は、まさにこのスローガンどおりです。彼は、自分の信念にもとづいて抗議行動を行ったため、フットボールのキャリアを停止されたと主張しています。

警察官の人種差別的な暴力に対する抗議行動とは、試合前の国歌斉唱中に起立することを拒否し、片膝を立てるというもので、2016年シーズンの初頭から始められました。試合後、Kaepernick選手は「黒人や有色人種を抑圧する国の旗に敬意を払うことはできない。この問題について見て見ぬふりをするなんてできない」と自身の行動を説明しています。シーズン中、彼は国歌が演奏されるたびにひざまずきました。さらに、シーズンが進むにつれて、他の選手が彼の抗議活動に加わり始めます。Kaepernick選手がフリーエージェントになった2017年でさえ、国歌斉唱中に片膝を立てる選手はどんどん増えていき、その活動はチーム幹部から全国的なファンまで、NFLの至る所で論争を引き起こしました。

 

 

Kaepernick選手の抗議行動が注目や賛否両論の反応を集めたように、Nikeの広告も同じような反応を受けました。ソーシャルメディアでは、Nikeのシューズを焼いたり、靴下からNikeのロゴを切り取ったりする動画をシェアしたユーザーもいました。

しかし、どんな炎上もそれに見合う価値があります。マーケティングコンサルティング会社Metaforceの共同創立者であるAllen Adamson氏は、今日の世界では、関連性だけでなく消費者の注意を引くためにも、立場をはっきりと表明しなければならないと語ります。たとえその行動によって、一部の顧客が離れてしまうとしてもです。すべての人を喜ばせようとするブランドは、現在の市場で目立つことはできないでしょう」と彼は言います。どんな行動を起こしても、批判は避けられないものです。「どんな表明をしたとしても、一部のユーザーはいらだったり憤慨したりします。一部の消費者は離れていってしまうかもしれませんが、その他の消費者はさらに情熱を傾けてくれるでしょう。人々に無視されるよりは、一部の人に熱狂的なファンになってもらった方がいいでしょう?」

リレーションシップマーケティングエージェンシーRQの創立者兼CEOであるBrian Salzman氏も、この意見に同意しています。彼はこの広告を「文化を創造するブランドの最高事例だ」と語り、Nikeの注目度を向上させたと述べました。「人々と同じように、ブランドにも目的と精神が必要です。このことは、Nikeが大切にし続けていることでもあります」。この意識を持てば、現在のファンをさらに魅了しつつ、新規ファンを獲得できるかもしれません。

「人々は単に製品の供給元だけではないブランドを探しています。彼らはブランドが表明する立場を知りたいのです」とSiegel Galeの共同CEO兼最高戦略責任者であるDavid Srere氏も口を揃えて言います。

そして、このような広告を生み出すためには、その精神が本当に輝かしいものかどうかを確かめることが大切だと、Adweekのアドバイザリーボードメンバー兼Allureの編集長であるMichelle Lee氏は言います。「ほとんどの大企業が上辺だけをなぞったムーブメントを起こす中、Nikeの広告は非常に真正に見えます」と彼女は述べました。「彼らはスポーツにおいて世界的に大きな影響力を持っており、彼らのステートメントは、非常に多くの企業が八方美人に振舞っている時代でも、文化に影響を与える力を持っています」。

さらにNikeは、強固な基盤と忠実な(そして大規模な)顧客基盤を持つブランドでもあるため、どんな批判にも難なく耐えることができるのです。Salzman氏が言うように、「Nikeは、時代や政治問題に関して共感を呼ぶブランド目的を持っています。このコミュニケーションは時代を越えて永遠に生き続けるでしょう」。

この広告は、Nikeがマーケティングの限界に挑んだ初の事例ではありません。スポーツ界の黒人がほとんど広告に登場しなかった90年代、Nikeはブランドの顔としてMichael Jordanを起用しました。このようなNikeの過去や社内リソースによって、彼らはどんな否定的なフィードバックでも冷静に対処することができるのです。

「Nikeは、すべてを理解したうえで行動しています」とAllieri氏は話します。「どんな反発が起きても、Nikeにとって驚くべきことではありません」。

Nikeの準備が万全だったのはさすがとも言えるものでした。広告を出すタイミングが少しでも遅れていたら、違う結末を迎えていたかもしれないからです。Nikeは、2011年(国歌斉唱中に初めてひざまずいた5年前)以来、Kaepernick選手のスポンサーを務めてきました。彼は過去にもNikeの広告に登場していますが、数年ほどマーケティング資料に起用されていませんでした。Yahoo! Sportsによると、Nikeが彼とのスポンサー契約を更新しなかった場合、AdidasとPumaがKaepernick選手と契約を結ぼうと社内で話し合いを行っていたそうです。

契約更新後に今回のキャンペーンを進めたことは、Nikeにとって短期的かつ長期的にも絶対に負けない賭けだったのでしょう。「公の議論に参加するブランドは、ブランドに良い影響を与えるだけではなく、ビジネスにも良い影響を与えます」とマーケティングコンサルタント会社Verbの共同創立者であるYadira Harrison氏は語ります。

また、「ソーシャルメディアでトレンド入りするほどの話題を集めるには、莫大な広告費がかかります」とTaco BellのCMO兼AdweekのアドバイザリーボードメンバーであるMarisa Thalberg氏は指摘します。「Kaepernick選手を起用することは間違いなくNikeが計算していたリスクでした。注目したいのは、『それは、ブランドエクイティやブランドボイスと一致するリスクだったか?』ということです。私の見解では、この広告はブランドエクイティやブランドボイスと一致しており、その意味で大きな価値がありました。これは日和見主義的な広告ではなく、彼らに流れるDNAを大胆な形で表現したもだと感じます」。

ブランドキャンペーンによる長期的な影響の予測を聞くと、「悪評も宣伝のうち」という古いことわざが思い浮かびます(ソーシャルメディア分析会社Talkwalkwerによると、Nikeのソーシャルメディアのメンション数は、広告公開後に135%も増加したそうです)。たとえ一部のファンが離れてしまったとしても、最終的にこの広告によってNikeの名前は注目を集めるでしょう。そしてNikeもこの広告が時代を越えて生き残ると確信しています。

「Nikeは、アスリートと文化を推進するために、長い間、人々の慣習に疑問を投げかけてきました」とスポーツコンサルタント会社Power Forward Sports GroupのオーナーであるLuke Bonner氏は言います。「Nikeは、Kaepernick選手の方が歴史の流れに乗っていることを理解しているのでしょう。彼はこの世代にとって、もっとも影響力を持つ選手の一人ですからね」。

 

この記事はAdweekのDiana Pearlが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

 

元記事「Why Nike’s 30th Anniversary Ad Featuring Colin Kaepernick Is a Worthwhile Risk」は2018年9月10日にInsights.newscred.comに掲載されました。

 

また、日本におけるNewsCredパブリッシャーネットワークに関してはNewsCred by amanaまでお問い合わせください。

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